パリとプロヴァンスでフローラルアーチストとして活躍した尊敬するフレデリックガリーグとの出逢い、そして思い出となった『Our Story …私の花物語』です

〜3.11の出逢いの花束〜

フランスの資格を取るときに、ぜひ本場のフローリストにも習いたいと思いました。沢山いるパリのフローリスト探すのも大変、、、雑誌やネットで調べて自分が好きなお花のテイストのフローリストがフレデリックガリーグでした。いよいよその日を迎えた朝、あの3.11の東北大震災で、福島県の親兄弟と安否の連絡がとれず、知人数人と申し込んだ始めてのレッスンをキャンセルせざるを得ませんでした。その晩に幸い両親兄弟とも連絡が取れて、無事であることを知りました。次の日にどうしても彼のレッスンが心残りで、せめて一目会ってお詫びしたいと思い、出かけていきました。初めて見るアトリエ、そして彼は笑顔で迎えてくれました。沢山のお花を仕入れてくださったのに申し訳なかったと謝りました。私の家族を心配して下さった上に、私の為にこのような『白いスイトピーの花束』を作ってくださったのです。本当に心からやさしい人だと、心の底からありがたく思いました。そして次に来た時には、必ずレッスンを受けますとお伝えするすることができました。これがフレデリックとの初めての出逢いでした。

〜再会のダリアの花束〜

約一年後、再度 渡仏出来ることができました。サンジェルマンデプレに1ヶ月程滞在できました。まだ暗い早朝にフレデリックはランジス市場に一緒にいくことになりました。お互いに緊張してたり、お話をしていたので、うっかり高速の出口を通り越し、オルリー空港まで行ってしまうハプニングもいい思い出になりました。とてつもなく広いランジス市場に着いて、見たことがないお花が沢山あって、まず感動だらけでした。フレデリックは、私の好きな花を選んでいいよと言ってくれたので、ダリアやグラミネ、黒ほうずき、ヨウシュゴボウなど、素敵なお花を選ばせてもらい本当に嬉しかったです。彼のアトリエに着くとダリアのシャンペトルを教えてもらいました。とても素敵な名前のブーケに大感激しました。

〜初めてのコンポジション〜

3度目の渡仏では、1週間かけてレッスンを受けさせて頂くことになりました。フランスではアレンジメントのことをコンポジションといいますが、あまりレッスンではしていないようで、お願いして作ったのがこの作品です。アグロステンマやスカビオサなどが入ってピンク色の野の花の感じの並行のコンポジション。でも、この下にある草はペット用の草だったのです。そこへアレンジをしたのですから、彼の斬新な発想のデザインに本当に驚かせられました!

〜初来日の記念すべき花〜

月刊フローリストにフレデリックのフラワーと当店が掲載されるお話がきまりました。からのお花はコンポジションで、クリスマスローズを使いました。本当に綺麗なピンク色の花々が生き生きとしています。心の優しさが現れる作品です。
この中には近くのパン屋さんにフランスパンを買いに行って道を歩いているときに、道端のピンクの小花な雑草をあつめていたので何に使うのだろうと思ったら、このアレンジに使っていたので驚きながらも納得しました。雑草「イヌダテ」も立派な花だったことを知りました。

〜プロヴァンスシャンペトルの花束〜

南仏プロヴァンスアヴニョンからクルマで20分のところに、パリから移転したフレデリックに会いに行きました。とても小さな村です。女性が経営するお花屋さんのミストラルで一瞬に働いておりました。連絡をとってもなかなか返事がなくて困ってしまい、一目見るだけでもと直撃訪問し、待つこと2時間、やっとフレデリックに会えました。連絡があったことはわかっていたようで、歓迎してくれました。裏の作業場を案内してくれたり、レッスンをさせてくださいました。憧れだったプロヴァンスでお花を習うことが出来て感謝いたしました。お花は旅行先のロワール城で撮影したものです。

初来日記念講座 〜プロヴァンスのクリスマスに贈る花束〜

当店が開店したときに初来日したフレデリック。私もこのお店でフレデリックのレッスンをしてみたいと願っていましたので夢が叶って嬉しかったことを覚えています。このプロヴァンス風のお店も気に入ってくれました。来日記念のレッスンは、エリカの花やオリーブの枝などをたっぷり使い、ミラビフローラを星に見立てたロマンチックな花束を教えてくださいました。プロヴァンスのシャンペトル花束に皆さん大満足のご様子でした。

〜紅葉の花籠籠〜    京都もみぢ家にて

日本に来たら京都に行きたいと言っていたフレデリック。嵐山の骨董屋さんで籠を見つけて、老舗のお花屋さんに行き、もみぢ家の川床料理に合うお花をお願いしました。京都老舗のお花屋さんでは捨ててしまう材料を使っていたので、オーナーも私もビックリしてしまいました。フレデリックには捨てるような枯葉も枯枝も宝物だったのでしょう。日本人より日本人の心が表現された素晴らしい和の花束でした。本当は籠よりその下にあった器を入れる箱が欲しかったらしく、タダでは頂けないと思って、私は花籠を買うことになり、反対にこんなステキなお花を見ることができて嬉しかった。

〜オリーブとバラのクラシックの花束〜

彼のアーティスト的なところは、絶妙な色合いとテクスチャーの花を花束にできるところ。フランスからアンティークなクラシックの楽譜を持ち込んで、フラワーベースにしてしまうところ。撮影時はカメラマンと色や向きまで細部まで拘りと探求心には、多く学ぶべきものがありました。後ろの麻布を持ってお手伝いしたり、フランスで見つけた大事なアンティークレースを私のケースからいつの間にか取り出し、ちゃっかり使っていたフレデリックに驚いた撮影の日の言葉は、本当に素晴らしい思い出です。

〜心に刻まれる花々〜

彼の優しさは、一輪の花を少女にあげて喜んでもらうこと。残ったひまわりの花もドライになって朽ちてもなお使いきるところ。畦道の雑草さえ愛してそれを見事に使うところ、、、どんな草花でも最後まで愛せたところです。彼から学んだことは、自然を愛し、季節を感じることで、精一杯咲いている草花一輪さえも愛することでした。
2017年2月 突然帰らぬ人になってしまったフレデリックガリーグ…本当にショックでした。この時にまさしくプロヴァンスにいた私は言葉の壁で、亡くなったことを理解出来なかったことを悔やみました。
自然や草花まで愛おしい存在であることを教えてくださった尊敬するフローリストであり、アーチストでした。日本人よりも四季を感じていたと思うくらい、感性も豊かな方でした。日本やパリ、プロヴァンスで出逢った多くのフローリストもいるでしょう。私が最初に出逢ったパリのフローリストであるフレデリックガリーグは、一生忘れることのない愛が溢れる花束を教えてくれました。彼はプロヴァンスの夜空に輝く星になって、きっと見守って下さっていることでしょう。
ご冥福を祈り申し上げます。

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